「もしもし、そこのあなた。今道に物を落とされましたよ。」
「わたし?わたしですか、わたしに言ってるのですね。」
「はい。そうです。
 どうぞお受け取りください。これはあなたの物です。」

「申し訳ないのですがそれを受け取る事はできません。」
「どうして?」
「落としたのではなく、置いたのです。」
「わかりました。私はあなたが困る顔は見たくない。
 私の手元にあるこれはどうしましょうか。」
「また道に置くか、もって帰るか
 あなたの好きにして頂くと助かります。」




同日、私はそれを自宅に持ち帰った。
手を叩くとピーとなって
コンソメスープを飲ますとチカチカ光る。
話しかけるとピカピカするんだけど、
それがまるで微笑んでいるみたいで私もつい口元が緩む。
空が晴れたある日、
私はそれを日差しが当たる場所に置いた。
夕方、外出から家に戻ると
それは泡になって消えていた。
ベランダから見える空の色は
からしみたいな色だった。