「赤色40号出て来なさいっ」

おっしゃる通り私は赤色40号です。
彼は両腕の力を込めて外側へ引っ張った方。
で、てっぺんの明るい場所からちょうど、穴に落ちた僕を見下ろす様な形で見てるわけです。
逆光で僕からは彼の姿は見えない、しかし彼等からは僕の姿がしっかりと見えているだろう。
そう思うとこれは少しばかり不平等な気がして腹立たしい気持になる。

そりゃ鮮やかな赤色でしたとも。いや、でも、ちょっと注意して見ると、ある人はマゼンダ系の赤が混じってると。そう言われる事があります。
実際それを手につけて蛍光灯の下にかざすと、へえ。まあそう言われるのも仕方がない。
僕らが口に入れるそれとは違う方向の色。たとえば果物の赤と色エンピツの赤の違いをこの色は教えてくれるのだ。
それを今まで気づかずに美味しそうに口していたのだから、彼等が怒るのは無理のない事だ。

ふと、地面の砂利と土を靴の内側で寄せ集めて小さな山を作る。色は灰色と茶色。
最近は4時を過ぎると空も色を変え始めるから、ここにいる僕らは、それを前提で外に出る時間を決めなくてはいけない。
ここいらも、すっかりゴムの溶けた匂いがする様になったね。
そう、再開発の波は僕の目の前に迫っているのだ。

知ってます?魚って今日みたいな寒い日は水の深い場所へ潜っちゃうんですよ。
その方が暖かいんですってね。