午前5時、男は凍った地面の上を歩く。
男は初電で帰る。
男はホームで女性の落とした手袋を拾って渡す事が出来た。

改札を出た時、男は問題があって真っ直ぐ家に帰る事に気が進まなかった。

男は自分が次に目覚める時の状況を想像しながら駅前の店に入った。
男はその店で1番安い食べ物を頼んだ。
男はスープの上に浮いた油を箸で繋げる。

男には想像上の敵が多かった。
男はそれが不幸だとは思わなかったが、自分の欠点は自認していた。
自認はしていたが、常に呆れられていたり、馬鹿にされているのだと考えていて、男にはそれが許せなかった。

つまり男には想像上の敵が多かった。
しかし朝焼けを綺麗だと思うくらいの心はあった。

男は歩きながら白い息を吐く。
頭の中で自分への暴言を吐く。

男は毛先の広がった歯ブラシでボロボロになった歯を磨く。
先程の食事の事を考え、ちっぽけな後悔をする。

男の胃は疲れ、思考が鈍り始めそれぞれの問題と不安はかさぶたの様に剥がれていく。
男は冷たい布団に体を倒して、
近い将来シワのつく事になる目元をこすり、ゆっくりと目をつむる。

そして男は夢の中でヒーローになる。