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*log#676767

終電のホームの階段の真ん中で、ボサボサな長髪にニット帽を深めに被り、頬に苦労の皺を幾十に重ねた女性が透明なプラスチックケースを両手に抱えて、遠くを力無く見つめながら立っていた。

話なら聞きますよ。

白熱灯の光の下、遠赤外線ヒーターが地面をほのかに赤く照らす暖かいところ、雨音が遠のく様な場所で、肌触りの良いブランケットを膝に掛けて、温めた牛乳を飲みながら。
そんな男がいたら幸せだっただろう。


*log嚙み締める

 
 (地上から)高いところで珈琲をカップで飲んで椅子に座っていて、椅子は1つのテーブルを挟む形で1つあるんだけど、もう1つの椅子の上には自分の鞄が座っていて、窓の外には雲がぽかんと1つ浮かんでいて、オレンジと水色のグラデーションは綺麗だけど、ぽかんと浮かんだ1つの雲が遠足の集合時間に遅れて置き去りにされた子供のようにどうしていいかわからないみたいで、僕は本を読んでいてその本は季節の言葉の事を解説していて、例えばうなぎの料理の方法は西と東と違っていてその昔江戸は武士の町のためハラを切るのは忌まれていたので背ざきに逆に大阪は町人の町だったので料理の早い腹ざきにするとかなんとか、ぽかんと浮かんだ雲の様にすぐ忘れてしまいそう(本当は忘れたくない)な事が書かれていて、お腹の中にはカレーライスと先ほど珈琲と一緒に頼んだケーキが入っていたので、僕は幸せそうな気分で寝た。


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