なに
これ。
いしいしんじ著
「東京夜話」
前に東京トンガリキッズみたいな短編集を読みたいと言っていたけど、
これはこれでかなりヒット。
前に読んでいた中島らもさんのエッセイでもこの本の事を書いてたな。
ゲストブックでオススメしてくれたはなさんありがとう。
このカキコがなければ
僕はGoogleでぐぐってAmazonに行き着き
この本に出逢う事はなかった。
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話の中身は下北やら原宿やら西新宿やら東京の街が舞台となった短編集。
半分現実離れしてる。
(原宿で人間の姿をした宇宙人に会う等)
らもさんが紹介していた
クロマグロとシロザケの恋愛話も面白い。
だからあの日、
新宿の世界堂で102とベロニカに会った時も、
僕はずーっとクロマグロとシロザケの事を考えていたのかもしれない。
僕はベロニカに何度も起きてーと言われた。
頭の中では冷たい海を泳ぐクロマグロをイメージしていた。
そしておもむろに陳列された商品棚から
「押す」の表示プレートを手にとる。
銀色に鈍く光るプレートを見つめ、
僕は二人に向かって
突拍子のない言葉を言う。
「ここは“押す”べきだね。」
「いいね、いいね、これ~」
「こんな気分は久し振りだねー」
「次はどこにする??」
「あれ。」
僕は七階建てのビルを指した。
土色のビル。
室外機が虫の様にへばりついてる。
その後ろは青い空。
雲1つない空。
本日は晴天。
空気は肌寒いけど、
日射しがとてもあたたかい。
ひょっとしたら今が春だと
間違えてしまうかもしれない。
別に平気だけどね。
「こんばんは」
と三角ハットのおじさん。
拡張された道路の
真新しい部分に立っている。
靴は油でペッタペタ。
「おじさん、今は昼だよ。」
「おじさんはね、
多分気付いてないだろうけどね、
いや、たぶん、
本当さ?今はね昼なんだよ。」
僕らの背中、
遠く遠く、
後ろでは女の叫び声。
この街は少しだけおかしい。
「いこ。」
友達は真新しいブーツで
僕が見つめる方向へ走っていた。
「行っちゃったよ、友達」
三角ハットのおじさんは
泥になってそう言う。
その時僕は遠くを見つめていた。
もしかしたら
友達は僕の見つめる
方向――。つまり
遠い場所へ行ってしまうのかもしれない。
僕の遠く遠く後ろでは
女の叫び声。
そして僕の遠い遠い先は
友達が走っていく。
「行かないのかい?」
おじさんは水になっていた。
僕は考えている。
たとえば60円払って
100分の1の確率でその幸せが手に入ったとすれば。
僕は100分の1で幸せに当たったという事になる
でも残りの99は不幸せかって言われればそうでもない。
1はスクリーンの中の映画だ。
フィルムの外から出る事は決して出来ない。
99と1は違う。
当たりの棒に出逢ったら、
99に引き換えをするため
走るだろう。
僕も最後はおじさんみたいに
水になる。
遠く遠く後ろで
叫んでた女の声は枯れた。
おじさんの言うことは
本当だったみたい。
今は夜だ。
僕は嘘をついていた。
友達は―。
夜は何をする?
眠る?
それも正解だ。
眠れない?
寝なきゃいいだろ?
お好きにどーぞ!